初対面

20200522_1

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秋津が入室しました
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ツムギが入室しました
 
 
 
 
 
 
 
――ぼんやりと窓の外を眺める内に、何度目かのチャイムが鳴った。
時間きっかりに礼をした教員に、教室のクラスメイト達が応えていく。
一日の終わりの授業だから、放課後の事を考え始めたそれぞれの声に教室はあっという間に呑み込まれた。

 
 少し長引いた帰りの会が終わり、教室に集まっていた者達はそれぞれ散らばっていった。
放課後も教室に留まって会話を続ける者や、そそくさと一人で教室を後にする者、部活へとふらふらと歩いて行く者まで、様々だ。
冬よりも大分長くなった夕日を眺めながら、小柄で細身な少年もそっと席を立った。
古手 陸
また明日、とクラスメイトに声をかけながら教室の扉に手を掛けると、少年はいくつか帰ってきた声と共にそこを後にする。
雑な手入れをされた、少しくたびれた学生服から覗く四肢は酷く細い。
成長を見越して選ばれたと思われるサイズは、成長途中の体躯には見合わずぶかぶかで、酷く不格好だ。
当人は気にしているのかいないのかは定かではないが――学生鞄を肩に乗せ、たん、と階段を降りていく。
スノウドロップ
校門の前には、この学校と隣り合わせの中学の制服を纏った少女が一人。
この国では異質な顔立ち、髪と瞳の色、そして腕に巻かれた包帯が人目を引く。
古手 陸
擦れ違う教員や同級生、先輩後輩にはそれぞれ軽く挨拶を返しながら、昇降口でさっと靴を履き替え。
下駄箱の隣、吉田の靴入れから溢れかけていた幾つかの手紙を推し戻してやって、そっと後にする――と。
校門の前に立つ、――見覚えのある様なない様な、あやふやな制服を纏った――少女には、物珍しそうな視線をひとつ向けた。
スノウドロップ
少女は向けられた好奇の目を気にした様子もなく、ただ立ち尽くしている。
けれど、少年の姿を見つけると、ぱちりとひとつ瞬きをした。
古手 陸
「……?」
少女の瞬きと視線には小さく首を傾げたが、それ以上気にする様子もなく歩を進めて行く。
スノウドロップ
少年がこちらを認識しないまま歩き去っていくのを、少女は小首を傾げて見守ってからゆっくりと歩き出す。
そうして彼に追いつくと、無造作に少年の制服の袖を握った。
「──貴方が、古手 陸で間違えないかしら」
古手 陸
「う、お……っと」
袖を握られると、反射的に伸ばしかけた手を強引に引き留め、少女に視線を向けた。
スノウドロップ
少女は無言で問いかけに対する答えを待っている。
古手 陸
「……そう、だけど。お前誰だよ?」
袖を取る手を緩く払いながら、眉を顰めて声をかけた。
スノウドロップ
「……私のことは聞いていないのね」
手を振り払われ、不満げに溜息をつきながらぽつりと零す。
古手 陸
「はーぁ? 何だそれ」
少女の様子に呆れた様に口を開いて、肩を竦めると右手の人差し指を向けた。
「つーか、誰なんだよお前。人に名前を聞く前に、自分から言えよな」
マナーって奴だろそれが。覚えたての言葉を重ねながら、首を傾げた。
スノウドロップ
「スノウドロップ・ヴォド。──人を指さすのは、マナー違反だわ」
先程よりも増えた好奇の目線と、周囲のざわつきを意に介した様子もなくはっきりとした声で告げる。
古手 陸
「あ、悪い。……んで、スノー……なに?」
マナー違反だと言われれば、大人しく手を引っ込めて小さく頭を下げた。
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夕焼け空/(C)beiz images
スノウドロップ
「スノウドロップ・ヴォド」
少年が素直に手を下げれば、小さく頷いて。自分の名前を繰り返す。
古手 陸
[
]
「……スノー」 「スー?」 「スノウドロ……」
噛んでいるのか記憶できているのか定かではない様子で訥々と零して、何となく頷いた。
「スノーでいいか?」
スノウドロップ
「嫌よ」
少年の提案をばっさり切り捨てて、もう一度溜息をつく。
古手 陸
「なっげーんだよ……」
当てつけの様に溜息を吐いて。
「そんで、何の用だよ?」
スノウドロップ
「どうしても名前を覚えられないなら、そうね、……先輩でいいわ」
少年の服の袖をもう一度握っては、歩き出して。
「──『仕事』の話よ」
古手 陸
続いた言葉には、げ、と顔を歪めると、周囲の様子を確認する様に周囲を見回した。
ざわついている周囲の人間の中には、クラスメイトの姿もいくつかいるのだから、そんな話をするのならばここにはいられない。
――そうかよ、“センパイ”」
溜息混じりに答えると、スノウドロップの手首へと雑に手を伸ばした。
スノウドロップ
「……何かしら?」
手首に伸ばされた手をひらりと避けると、表情は変えず首を傾げて。
古手 陸
「見て解んねえのかよ。こんだけ人が多い所でそんな話したくねえし……場所変えようぜ」
空を切った手を、肩を竦めながら収めると、ふいっと校門の外を顎で示した。
スノウドロップ
「……そうね」
言われて初めて気が付いたように、奇異の目を向ける周囲を眺めて。
大人しく頷くと、示された通りに外に歩き始める。
古手 陸
「……」
どこまで連れていったものか。内心では大きな溜息を零しながら、少女の前を歩く。
少なくとも、学校からは離れて――
 
 
古手 陸
――ま、ここならいいだろ」
少年がそう零したのは、遊具が少ない上に敷地も狭い公園だ。
放課後だというのに、遊んでいる子供の姿はなく、周囲には少年と少女の二人しかいない。
所々錆び付いている滑り台の上にひょいと昇ると、その上から少女へ、ここで話せと言いたげな視線を向けた。
スノウドロップ
滑り台の上の少年を見上げて、首を傾げる。
「そこに上る必要は無いわ。首が痛いから降りて」
古手 陸
「あー? 何でだよ、顔見なきゃ言えない話じゃねえだろ?」
首を傾げつつ不満そうに声を漏らしながらも、ずるずると滑り降りて、尻を軽く払った。
「ほら、降りたぞスノー」
スノウドロップ
「人と話をするときは、目を見るようにと教わったわ」
言葉通りに少年の目をまっすぐに見つめてはそう呟いて、溜息をひとつ。
「……貴方、馬鹿なのね」
古手 陸
「……はーぁ?」
眉を顰めながら、腕を組んで低い声を漏らしてみせると、少女と視線を合わせた。
「喧嘩売んのか話をすんのか、どっちかさっさと選んでくれよ」
スノウドロップ
「スノウドロップよ。これ以上訂正させないで。……何か話をしに来たわけではないの」
古手 陸
「……あー、スノー……」 「スノードロップ!」
スノウドロップ
「そうよ、いい子ね」
犬にでも言うような言葉で褒めては、殆ど同じ高さにあるその顔をじっと見つめる。
「今日は会いに来ただけ。今度組むことになる相手を、知っておくべきだと言われたから」
古手 陸
「…………」
唐突な子供扱いに、思わず眉を顰めてしまう。
色々と問い詰めたい気持ちを堪えられなくなりそうになったところで、スノウドロップの口から出た言葉がそれを押し込めた。
「……マジでか」
スノウドロップ
「先輩として、貴方を指導するわ。しっかりと従って頂戴」
そう言って差し出された手は、握手を求めるものにも犬にお手を求めるものにも見える。
古手 陸
「…………」
差し出された手を取るか、少し悩んで。ゆっくりと口を開く。
「ま、冗談とか嘘でここまで来るようなヤツにも見えねえし……宜しく頼むよ、センパイ」
観念したように言葉にして、伸ばされた少女の手を取ったが、スノウドロップにとっては酷く弱々しく、重ねただけの様にも思える。
スノウドロップ
「握手はしっかりと。これもマナーよ」
弱弱しく握られた手をぎゅっと握り返しながら、また指導の言葉を続けて。
古手 陸
首を傾げて、眉を片方釣りあげた。
「は? してんだろ、しっかりと」
スノウドロップ
「していないわ。これじゃ死んだ魚の手だもの。失礼にあたるわ」
握っていた手を離しながら、不満げな少年を見つめ。生真面目にそう言いながら、ふと視線を暗くなり始めた空へ向ける。
古手 陸
「な、」
呆気にとられた様に手の力を抜いて、ひきつった笑みを浮かべた。
「なんつう例えしやがる、この女……!」
スノウドロップ
「そういう例えが英語にはあるのよ。知らないの?」
ひきつった笑みを眺めて、不思議そうな顔で首を傾げてはゆっくりと公園の出口に向かって歩き始めて。
古手 陸
「知らねえよ! ここは日本! なんだからよ!」
少女に連れ立って歩き始めながら、ぎゃあぎゃあと喚き立てる。
スノウドロップ
「そんなに大きな声で話さなくても聞こえるわ」
煩わし気な声で、喚く少年を睨みつける。
古手 陸
「あぁそうかい、そりゃ悪かったな!」
いーっと歯を見せて応えながら、小さく溜息をひとつ。
「……顔合わせに来てくれたんだろ。どっから来たんだ?」
スノウドロップ
「……気が付いていないの?」
やっぱり馬鹿なのかしら。……とでも言いたげな調子で、呟く。
「制服。見覚えあるでしょう?」
古手 陸
「あ? 何が――
首を傾げながら、制服と言われればぎこちなく頷いた。
――隣か!」
スノウドロップ
「貴方、成績は優秀だって聞いていたのだけど」
呆れた風に首を横に振っては、本日何度目かもわからない溜息をつき。
古手 陸
「そりゃ訓練(そっち)はな。……センパイには苦労をおかけしちまいそうで申し訳ねえなあ」
スノウドロップ
「構わないわ。それが私に求められた仕事だもの」
古手 陸
「そうかい。んじゃ気兼ねなく。……今日は帰るか?」
スノウドロップ
「でも甘やかしはしないから。きちんと覚悟しておいて」
静かに釘を刺しながら、問いかけには頷いて。
「帰るわ。連絡なく帰宅が遅くなったら、お兄様が心配するもの」
古手 陸
「期待してねえよ、甘やかされるなんて。……、……」
笑って答えながら、続いた言葉には小さく苦笑した。
「んじゃ急げよ。陽が長くなったっつっても、もう暮れるぜ」
スノウドロップ
「そうね。さようなら、陸」
苦笑の意味が解らずに、小さく眉を顰めながらも問いかけることは無く。
短い別れの言葉だけ告げて、少女は振り返りもせずまっすぐに歩き去っていく。
古手 陸
「あいよ。じゃあな、」
スノードロップ、と続けようと口を開いたが、続く言葉は出て来ない。
がしがしと頭を掻くと、大通りまではその背中をこっそりと追って、人通りのある場所まで出ればそこで分かれて帰路についた。
秋津
〆 かな
ツムギ
かな。辛辣な言葉をぶつけられた。
秋津
すのう「覚えがないわ」
ツムギ
酷い話だ。ログは格納しておくので、退室しておいておくれやす
秋津
はーい
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秋津が退室しました
背景
BGM