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- スノウドロップが入室しました
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- 古手 陸が入室しました
『十字路の幽霊』の騒動が落ち着いて、数日後。君たちは日常へ帰ってきた。
変り映えのないように見える日々が、実はそうではないのだと知っても、毎日は淡々と続いていく。
- 授業の終了を告げる鐘の音が鳴る。ある生徒たちは部活動へ向かい、ある生徒たちは帰路に付く。
これは、そんななんて事のないとある放課後の話。 - 精密検査の末に、数日ぶりに学校にやってきた少女は溜息をついてから席を立つ。
随分と、授業に後れをとってしまった。家で自習をしなければならないだろう。
そうして速足に校門に向かえば──見覚えのある人影を見つけて首を傾げた。
- スノウドロップ
- 「………………?」
- スノウドロップ
- というところでざっくりですがどうぞ!
- スノウドロップの視線の先では、ひとりの学生が校門に身体を預けている。
- 酷くぶかぶかな学生服を身に着けており、その袖元から覗いている手は不安になるほどに細く白い。
- 古手 陸
- 「――……」
そんな人物に一人だけ、スノウドロップは心当たりがあるだろう。
UGNで活動する際の、暫定的なバディである“捨て犬”だ。
- スノウドロップ
- 「……、……?」見間違いではないけれど、待ち合わせをした覚えもない。最初の邂逅と逆のシチュエーションに、ただただ不思議そうな顔。
- 古手 陸
- ぼんやりと空を見上げながら、門の前でただじっと立っている。
隣とはいえ、他校の制服だ。浮いてしまうのは当然の事で――スノウドロップを視界に入れると歩み寄って来、声を掛けて来るとなればより視線を集めてしまう。 - 「帰んぞ」
そうする事が当然の様に、左手は肩へとかけた学生鞄を持ち、右手はポケットへと突っ込まれている。
- スノウドロップ
- 「……何か用事?」
待ち合わせをしてまで一緒に帰るような仲ではない。少なくとも、自身の認識ではそのはずだ。
たまたま時間が合えば、時折帰路を共にすることはあったかもしれないが。
- 古手 陸
- 「だから、帰るぞって」
言ってるだろ、と眉を顰めて続けて。やはり当然の様に、顎で校門の外を示して見せる。
- スノウドロップ
- 「待ってくれ、といった覚えはないけれど」
帰ること自体には異論はない。校門の外に向けて歩き出す。
- 古手 陸
- 「待つなんて言ってねえよ」
はん、と鼻を鳴らして、その背の後ろを付いていく。
- スノウドロップ
- 「なら何故、あそこで待っていたの?」
ついてくる……ということは、自分以外を待っていたというわけでもないのだろう。
- 古手 陸
- 「何故って、そりゃお前一つしかねえだろ」
後ろについていた所を、そのまま横まで来ると並んで歩き。
- スノウドロップ
- 「……………………………」
熟考したが、答えは導き出されなかったのか眉を顰めて。
- 古手 陸
- その様子を見ると、少しだけ得意気な表情を浮かべた。
「解んねえのか?」
- スノウドロップ
- 「解らないわ」
何か忘れている約束でもあっただろうか。
- 古手 陸
- 「……まーた誰かさんが連れてかれない様に見に来てんだよ」
視線を向けて、やはり得意気に。
- スノウドロップ
- 「……?『十字路の幽霊』の事件の件はもう片付いた、と聞いているわ」
- 古手 陸
- 「片付けたよ。お前が寝てる間にな」
頷いて。 - 「ただ、また似たような事が怒っても寝覚めが良くねえから。どうせ帰りは出るところは大差ねえんだから、送ってくかって思っただけだ」
- スノウドロップ
- 「なら、護衛は不要じゃないかしら、……」
一人で帰ればよかったのに。そう言いかけて、陸の言葉が続けば少々不服気な顔をして。
「……お守りが必要な子供扱いは、不服だわ」
- 古手 陸
- 「ちげーよ」
子供扱いだと不服そうにするスノウドロップに、首を横に振ってみせて。
「子供扱いしてんじゃねえよ、ただ、……ほら、な?」 - 「何かあった時、2人でいる方が対応出来るだろ」
- スノウドロップ
- 「別に。私は──1人で問題ないわ」
これまでも、これからも。誰かに頼ることは好きではない。守る側と守られる側。そういう風に、はっきりしているのが気楽だ。
- 古手 陸
- む、っと表情を曇らせて、少しだけ語気を強めて口を開く。
「問題だったし、助けが必要だったじゃねえか。少なくともユウレイん時は」
- スノウドロップ
- 「あ、れは。……たまたまでしょう。これまではそんなことなかったもの」
痛いところをつかれれば、少しだけ言葉を詰まらせながらそっぽを向いて。
- 古手 陸
- 「次、同じ事があったら!」
そっぽを向いたスノウドロップの正面に回り込み、眼を見つめた。
「また無事なのかわっかんねえんだぞ!」
- スノウドロップ
- 真正面に回り込まれれば、少しだけ困ったような顔をして。
「そんなの、……とっくに覚悟しているわ。明日の保証なんて、あったことは一度もないもの」 - 「そういうもの、……じゃないのかしら」
- 古手 陸
- 「バ、ッカじゃねえのかお前!」
掴みかかってくるかと思わせるほどに詰め寄ると、じっと睨み付ける。 - 「お前にはちゃんと見てくれる人がいんだろが。例の“お兄様”だとか、そういう……何人だとかは知らねえけど!」
- 「折角気にして眼にかけてるお前が、そんな考えで動いてるなんて知ったら、どんな顔するか考えた事あんのかよ」
- スノウドロップ
- 「お兄様は、私の指導官よ」
何故怒られているのかわからないのか、ただ困り顔のまま呟く。
「全部知っていると、思う……けれど……」
- 古手 陸
- 「ケド、なんだよ。それは良い考えだー、なんて言ってきたか?」
- スノウドロップ
- 「いいえ。何も言われたことはないわ。こんな風に怒られたこともない」
「……、……ごめんなさい。貴方が何に怒っているのか、わからないわ」
- 古手 陸
- 「はー」
肩を竦めて、呆れた様に首を横に振って。 - 「お前が怪我したりしただけで大騒ぎになる人がいんの」
- スノウドロップ
- 「そうね。指導官だもの」
- 古手 陸
- 「何でかくらいは解るだろ」 肩を竦めて。
- 「…………」 解ってる? 大丈夫かこれ?
- スノウドロップ
- 「ええ」解ってない。
- 古手 陸
- 「じゃあ、何でか言ってみ……?」
- スノウドロップ
- 「私は感情面の制御が不安定なオーヴァードで、暴走も危ぶまれる。怪我によって何か変動したら不測の事態も発生しえる」
- 古手 陸
- 「だろうと思ったわ~……」
何とも言えない表情を浮かべて、溜息を吐いて。
- スノウドロップ
- 「だから怪我をしたときや何かあった時は全て報告するようにと……?」
- 古手 陸
- 「そういうのじゃなくってよお……あの騒いでたって話だと、それだけじゃねえって……」
- スノウドロップ
- 「……?そうね、お兄様は賑やかな方ね?」
- 古手 陸
- 「“オーヴァード”として、じゃなくて、“人間”として気にしてるんじゃねえの。……今回お前が消えたって時に騒いだくらいしか知らねえけどさあ」
- スノウドロップ
- 「それは……」
違う、あくまでも二人の関係はそう言ったものではない。……と言い切ろうとして、なんとなく言葉を止める。
- 古手 陸
- 「それは?」
何だよ。怪訝そうにしながら、次の言葉を待っている。
- スノウドロップ
- 「……それは関係ないでしょう?貴方には」
続かなかった言葉の代わりに、突き放すようなセリフを続け。
- 古手 陸
- 「俺にはな」 肩を竦め。
「けど、お前がさっきみたいな考え方でいたら、そいつらがどう思うか考えろよって話だ」
- スノウドロップ
- 「そんなことまで考えていたら、……ちゃんと守れないでしょう?」
- 古手 陸
- 「バーカ」
- 「考えて、ちゃんと守れ。どっちもやれ」
- スノウドロップ
- 「何度も言わせないで。貴方に言われたくないわ馬鹿犬」
「……そういうのは貴方がやればいいの」 - ふい、っとまた顔を背けて。
- 古手 陸
- 「――駄目だ。お前がやれ」
視線を合わせようと、スノウドロップの手を引こうと手を伸ばす。
- スノウドロップ
- 「私は……守る側でいいの。そこに私の居場所がなくても、『日常』を守れるのならそれでいい」
手を取られれば、また困ったように眉を下げて。
「……あの幽霊のところで、……」
言及しかけて、例の恥ずかしい格好について思い出して無表情に戻る。
- 古手 陸
- 「……? ユウレイがなんだよ」
一先ず言葉を呑み込んで、斬られた言葉を促す。
- スノウドロップ
- 「……あの幽霊のところで。他の子どもと一緒に、遊んだけれど」
羞恥心を押し込めながら深呼吸。
「どれも知らなかったわ。私は、あの子たちのする遊びについて何も知らなかった」 - 「だから、ああやっぱり私は『日常』には行けないし、違うんだって思ったの」
- 古手 陸
- 「……バッカじゃねえの、やっぱ」
もう一度、肩を竦めて。 - 「知らなかったんなら、知ってけばいいだけだろ?」
事も無げに、当然の様に言うとスノウドロップの手を引いて。 - 「ちゃんと『日常』を守って、知ってってさ」
- 「ちゃんとわかったら、そこに居りゃいいじゃんか」
そうだろ、と首を傾げて。
- スノウドロップ
- 「……都合のいいことばかり言うのね」
また突き放すように言いながら、それでも手は引かれるまま。
その理由が自分でもよくわからないのが、どうにも気持ちが悪かった。
- 古手 陸
- 「お前みたいにお利口じゃねえからな」
けっ、と悪態を吐くと、もう一度手を引いた。
- スノウドロップ
- 「そうね。馬鹿な犬だもの」
- 古手 陸
- 「――……それに、」
お前の居場所は、UGNにちゃんとあるだろ。小さく呟いた言葉は、聞こえたかもしれないし、聞こえていないかもしれない。 - 「あ?」
返答に眉を顰めて
- スノウドロップ
- 「だから、私が貴方を見ているわ。ちゃんと。先輩として」
陸の呟いた言葉は聞こえないまま、小さく微笑んで。
- 古手 陸
- 「――、……」
少し嬉しくなってしまったのは、きっと聞き慣れない言葉と、見慣れない表情を見たせいだろう。頷こうとした所で慌てて止めて。 - 「ま、お前にあんな趣味があったとは思わなかったけどな!」
- 「結構似合ってたぜ、あの服」
シマダに作って貰おうぜ、なんてへらへら笑って。
- スノウドロップ
- 「──……」
浮かんでいた表情を一瞬で消して。そして手を振り払う。 - 「──前言撤回するわ。貴方とはもう組まない」
冷たい目をしてそう言い返すと、小柄な体に見合わぬ俊足で駆け出す。
- 古手 陸
- 「――あ、おい!」
笑いを殺さずに獣化すると、その四肢でスノウドロップの背を追っていく。追い付けないまでも、完全に見失わない様に。
- スノウドロップ
- 「追ってこないで!目立つでしょう!!」
灰色の犬に追いかけられながら全力で街を走る女子中学生が、少々人目を集めすぎるのは世間に疎い少女にだってわかる。
- 古手 陸
- 「だったら大人しく止まりやがれッ! ゆっくり歩いてついて行ってやるからよ!」
叫び返して、そういえば今は獣化してるんだったな、とぼんやりと思い出し。
- スノウドロップ
- 「──ッ貴方、本当に!馬鹿なの!?」
ようやく『十字路の幽霊』の噂が落ち着き始めた街に、新たな都市伝説を生み出すつもりなのか。
- 古手 陸
- 「誰がバカだよ! 大人しく言う事聞きやがれ!」
後を追い駆けながら思い出したのは、親や兄弟と駆け回る歳の近い子供達の姿だ。
遠く眺めていた光景をぼんやりと思い返し――駆ける足が、それを払って少女を追う。
- スノウドロップ
- 「嫌だって言ってるの!少しは言うことを聞きなさい馬鹿犬!」
日常には憧れている。けれど絶対に、こんなのは求めていたものではない。断じてない。
本当に──この犬と出会ってから何もかも調子がくるって最低だ。
- 古手 陸
- 「――、く、くく」
くだらない言い合いを続ける事がどうにも心地良いなんて、物語でそういう事もあるとは知っていても、感じた事はこれがはじめてで――全速で走っているというのに、喉からは笑みが溢れてしまう。
- スノウドロップ
- 「何を──笑ってる、のよ!」
流石に息が切れて立ち止まれば、そのまま駆けてくる犬の額に学生鞄をぶんと振り下ろして。
- 古手 陸
- 勢い殺せなさそうなので飛びついてもいい?
先に鞄がぶつかるかそれより早く飛びつくかはダイス振る感じで。
- スノウドロップ
- いいよ
- 1d10でいいかい?
- 古手 陸
- ランダムダイスを振るのと2d10比べ合いどっちにする?
- 1d10ね
- スノウドロップ
- 1D10 → 10
- wwww
- 古手 陸
- wwwww
- 1D10 → 5
- スノウドロップ
- エンジェルハイロゥは速いのだ──
- 古手 陸
- 「だっ、お前――」
途端に脚を止めた少女に慌てて足を止めようとするも、その勢いを殺し切れない。衝突する――直前で、振り下ろされた鞄が頭を直撃する。
- 古手 陸
- 出目さんがはしゃいでおられる
- スノウドロップ
- 「あ」
気の抜けた声がこぼれる。流石に、避けると思っていた。
- 古手 陸
- 渇いた音と、打ち付ける鈍い感覚と、頭から強かに地面へと叩き付けられた灰色の犬のくぐもった悲鳴が響く。
- スノウドロップ
- 「あっ……」
流石にやりすぎたのはわかる。でも謝る気にはなれない。 - 「……………」
- 古手 陸
- 叩き付けられながら、勢いを殺し切れずにずざ、と暫し地面を犬が滑って――ぴたりと動きを止めた。
- スノウドロップ
- 「……り、……陸?」
死んではいないはず。こんなことで死ぬオーヴァードがいるはずがない。……でも当たり所が悪かったらまずいかもしれない。 - そろり、と近づいて犬の様子を伺う。
- 古手 陸
- ぐったりしたまま、瞳はぼんやりと彷徨って定まらない。
やがて、ハッと気づいた様にぱちりと瞬きをすると、よろよろと身体を起こす。
- スノウドロップ
- 「……無事?」
- 古手 陸
- 「んな訳あるか馬鹿!」
- スノウドロップ
- 「う、うるさいわ、貴方が悪いんでしょう!追いかけてくるから!」
- 古手 陸
- いてえ、と唸りながら後ろ足で頭を掻いて。
そのままお座りの姿勢で恨めしそうに見上げた。 - 「お前が逃げるのがいけないんだろ! 送るって言ってんのに!」
- スノウドロップ
- 「だからいらないって言ってるでしょう!あんなのも避けられない犬に守られたくないわ!」
- 古手 陸
- 「な」 カチン、と眼を細めて。
「んだと、てめえ!」
- スノウドロップ
- ぴんぽん。そんなことをしているうちに端末が着信音を鳴らす。
「……!もう帰るから!」
端末の画面をさっと確認してはっと目を円くすると、喧嘩腰の陸を置いてまた歩き出す。
- 古手 陸
- 「何だこいつ……待て待て!」
その背を追って、横に並んで。獣化したままついて歩く。
- スノウドロップ
- 「だから……」
要らない、といっても聞かないのは流石に理解した。納得ができるわけではないけれど。 - 「……家から10m以内の場所には近づかないで」
- 古手 陸
- 「お前が寄り道しねえでちゃんと家に入るならな」
ふん、と鼻を鳴らして、尻尾をゆらゆらと左右に動かしながら。
「ちゃんとお守りしてやるよ、センパイ」
- スノウドロップ
- 「………………」
無言でもう一度学生鞄を振り下ろしかけて、止める。代わりに溜息を一つ。
「お守りされてやる、の間違いでしょう?捨て犬」
- 古手 陸
- 「どっちでもいいぜ。何にしたって、お前は俺にとって日常側のヤツなんだよ」
たた、と軽くペースを速めて。 - 「だからこっちの勝手で守るし、持ってく奴には噛み付くぞ。ザンネンながらな」
- スノウドロップ
- 「……、……日常に留まりたいなら、喋るのをやめたらどうなのかしら」
何か言いかけて、それを飲み込むとまたつっけんどんな言葉を返し。 - 「犬は喋らないものよ。──それと首輪もしていないと保健所に追いかけられるし」
- 古手 陸
- 「喋んねえと楽しくねえし、楽しくねえと守っても意味ねえだろ」
何言ってんだ、と尾を揺らし。
- スノウドロップ
- 「そうであるのなら、ヒトでいなさい。私は、犬とお友達になるつもりはないの」
でもブルーについては別です。あれは猫ですから。
- 古手 陸
- 「へいへい」
人型に戻って、また貧相な少年が姿を現して。
- スノウドロップ
- 「いい子ね」
- 古手 陸
- 「そういう訳で、……俺が日常を出て行くのはいいけど、そっちはまた勝手にいなくなるんじゃねえぞ、スノウドロップ」
- 言うなり、ペースを速めて。
鞄を手に持ったまま、両手を後ろ頭に回して歩いていく。
- スノウドロップ
- 「さあ。どうかしら」
ふん、と鼻で笑っては歩き出す。
「置いて行かれないようについてこれるといいわね。私は速いもの」
- 古手 陸
- 「そしたらまた見つけてやるよ、バーカ」
いつかの十字路へと差し掛かると、反射的にスノウドロップを一瞥して。一歩下がって、視界に収めながら歩いていく。
- スノウドロップ
- 「そう」
陸の動作には気が付きつつも、歩みは止めずに進む。 - 「──それなら、そうして頂戴」
もう一度小さく微笑んだ顔は、きっと少年には見えなかっただろう。
-
そうして。二人が別れた後にはこの街には新しい都市伝説が生まれたとか、生まれていないとか。
「ひどく必死な形相で逃げる白い少女と、それを追いかける喋る犬」
「それを見かけると──黒服が現れて、貴方の記憶を消しに来るんだって!」
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- スノウドロップが退室しました
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- 古手 陸が退室しました